アレコレ読みたい雑記

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そして、バトンは渡された

[著者:瀬尾まいこ/文藝春秋]


 血の繋がらない娘と父親の、『本当の家族』としての触れ合いの物語。

 主人公・優子の複雑な両親の移り変わり、幼少期の父親との思い出、血の繋がらない母親・梨花との生活、高校時代の経験など、注目点は他にも色々ありましたが、物語の主軸は『優子と森宮の交流』だと思いました。

 血の繋がらない父娘の関係が本当に丁寧に描かれていて、読んでいて凄くホッとさせられるんですよね。優子の境遇ってかなり“重い”はずなんですが、それを全然感じさせない程、二人の関係の良好さが印象的でした。


 この優子と森宮の交流の積み重ねの描写が、終盤で一気に効果を発揮して来ます。意外な事実が幾つか判明しつつも、急激に盛り上がるわけではなく、ラストシーンまで割と穏やかに淡々と過ぎ去って行く。その雰囲気がとても良いんです。優子の幸せが、じんわりと心に染み込んで来ました。