[著者:伊坂幸太郎/角川書店]
『押し屋』なる謎の人物の行方を追って、『鈴木』『鯨』『蝉』の3人の主要人物の様子が描かれて行く。
それぞれの状況・立場はバラバラで、最初はハッキリ掴めないまま彼らの行動と行方を追っている感じでした。
それが中盤以降、ほんの些細なきっかけから共通の繋がりが出て来て、加速度的に接近・交わりを見せて行く。
各自の状況を掴むまでは正直もうひとつ乗り切れない気持ちで読んでいました。
ただ、次第に引かれ合うように、互いが影響を与え合いながら近付くに連れて、面白さも一気に増して行くような手応えでした。
先に敷いていた伏線なんかも「そう言う事だったのか」と、終盤でその気付きにスッキリさせられる場面も多かったですね。
個人的には『鯨』が一番好みで興味を引かれる人物でした。
霊が憑りついている、ささやきかけている、そんな彼の状態の異質さって言うんでしょうかね。
そう逝った所が強烈な印象として頭に残ったのだと思います。
主人公的立場なのは、間違いなく鈴木。
こいつは窮地に立たされても「絶対に死なねえな」と、最も『弱者』っぽいのに妙に期待させる所があったような気がしました。